深遠な響きを持つ紀尾井ホール。そこは芸術家の足跡が数多く残る聖地のような場で、私も若い頃から育てていただき、感謝の念に堪えません。
そしてピアニストの沼沢さんは、桐朋学園時代にかけがえのない時間を共に過ごした大切な友人です。
互いにロシア、ドイツを新しい地として選び、その後日本で再開した折、最初にリハーサルをした作品が、ラフマニノフのチェロ・ソナタでした。
沼沢さんの音楽は内的で美しく、一緒に演奏していると私自身、自然体でいられるような気がします。
「音楽」の背後にはいつも終わりの無い宇宙が広がり、自然の持つ美しさ、残酷さが表裏一体となったようなある種の恐怖すら覚えます。だからこそ、そんな世界へ飛び込み、何かを見出だそうとした作曲家たちの強い思念に興味は尽きず、深い魅力を感じずにはいられません。
会場で皆様と、こうした音楽を分かち合えることを楽しみにしております。
横坂 源